「構造化」
今日も学生スタッフが明日以降のサマースクールの準備にがんばっています。
ところで、「そら」が実施している障害をもつ子どもたちの活動にはさまざまな事前準備が必要です。この準備作業の手を抜くと、子どもたちは何をどんなふうにしてよいのかわからず、混乱を引き起こすことになります。いくら優秀な支援者でも、何のツールもなしに子どもと関われと言われたら、ほとんど無力に違いありません。
世間の多くの人たちにぜひともわかってほしいことですが、知的障害や発達障害をもつ子どもたちへの支援において最も大切なのは「環境を整える」ことです。一般に教育や保育の中で、これは高い優先順位に置かれていません。「子ども自身の力を伸ばす」ことが目標におかれています。しかし、障害をもつ子どもの活動において、「環境を整える」ことの大切さを理解せずにどれだけ手厚く支援者を配置しても、必ず失敗します。
「そんなこと言ったって、環境は簡単に変えられない」と言われてしまうかもしれません(しばしば、これは障害をもつ子どもを受け入れないための言い訳になります)。環境というと大げさですが、小さなことからでよいのです。
たとえば、明日の活動では「手巻き寿司」を作ります。そこで、学生スタッフは次のようなものを用意しています。
これは、一日のスケジュール。これを部屋の前にどーんと貼り出して、活動の見通しがもてるようにします。活動する部屋の名前を色分けして書くなどの工夫もしてありますが、これでも文字中心なので、多くの子にとってわかりやすいとはまだまだ言えません。文字の配置や絵の描き方などにも、もう少し工夫が必要でしょう。なお、個別にもスケジュールは配布して、手元でも確認できるようにしています。
スケジュールと組み合わせて使う写真カード。サマースクールなどの活動では、内容によって頻繁に場所を移動します(施設利用上の制約もありますが、それ以上に同じ場所でさまざまな活動をすることが、混乱を招きやすいからです)。そのため、「どこで何をするか」を伝えるのに、このようなカードが役立ちます。また、子ども自身が行きたい場所を支援者に伝えるのにも役立ちます。
これは、手巻き寿司づくりの手順表です。壁に大きく貼り出すものと、個別に配るものの両方を作っています。すべての工程をカラーの写真で示してあり、子どもたちはひとつの作業を終えるごとに手順表を確認して、次の作業に移っていきます。活動のたびにプリンターのカラーインクが激減してしまうのが難点ですが、この手順表のおかげで、「いま、何をするか」「次に何をするか」「あと、どのくらいでできあがるか」など、たくさんのことがわかります(もし、私たちが料理をするときに、これらの見通しがない状況を想定してみてください)。言葉だけでもわかる子はたしかにいますが、子どもが自分自身の力で理解できている、ということが、自信や安心につながります。子どもの特性に応じて、縦に長くつなげたり、1枚ずつばらばらに切ってカード状にしたり、使い方はいろいろです。
こんなふうに環境の意味をわかりやすく示すことを「構造化」といいます。知的障害や発達障害をもつ子どもと関わる機会の多い方たちには、日常で私たちが頼りきっている「ことば」の力をあまり信用せずに、目で見てわかりやすい環境づくりをしてほしいと思います(実際のところ、私たちもまた「目で見てわかりやすいもの」にたくさん支えられながら生活しているのですが)。
「そら」の構造化は、まだまだ未熟です。より良いものを目指して、がんばります。
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